Question

Q1: 人事考課制度運用のポイントを教えてください。
Q2: 「公正で納得性のある仕組み」とはどのような仕組みですか?
Q3: 考課者に求められる条件は?
Q4: 考課者がよく行う過ちは?
Q5: 考課に感情が入る、甘辛が出るといったことで余計に社員がやる気をなくす危険性がありますが?
Q6: 自己評価と上司の評価にかなりの違いが出る場合、どのようなことが考えられますか?
Q7: 他者評価と自己評価には、密接な結びつきがあると聞いたことがありますが?
Q8: 考課制度要綱に不満はなく、「あの上司に評価されるのがたまらない」とよく聞きますが、信頼を得る上司像は?
Q9: 誠実さの条件をあげるとすれば何でしょうか?
Q10: 人事考課者訓練とはどのようなことをするのでしょうか?

Answer

①人事考課制度運用のポイントを教えてください。

① 人事考課を運用する際のポイントは「公平」「公正」「納得性」です。人事考課の目的を明確にし、偏りがなく、誰の眼から見ても分かる考課結果を議論し調整して得ることです。これの仕組みを人事考課制度で定めることになります。

②「公正で納得性のある仕組み」とはどのような仕組みですか?

②公正とは「第三者から見て許容可能である」「第三者の目から見て尊厳に値する」ということです。
これを実現するためには基準・ルールの透明性が絶対条件となり ます。

1)  体系付けられた考課要素とその考課基準を公開することまた、経営課題への対応のため役割・職務基準書を変えることがあれば
 これに合わせ考課制度を見直すこと
2)  客観的な基準に基づいて事実を評価すること
3)  仕事上での行動・事実のみを対象とすること
4)  絶対考課で評価すること
5)  評価の後は、必ずフィードバックすることまた、納得性とは考課者の考えや行動などを十分に理解して得心することであり、
 これは仕組みを作ることで対応するしかないのです。したがって、以下の取組みが重要となります。
6)  実施の方法をルール化すること7)考課者訓練を十分行い、フィードバックすること

考課者に求められる条件は?

③それは以下のものです。
1)  総合的、分析的、本質的なものの見方ができること
2)  人を見る目を備えていること
3)  人事考課制度および運用に関する知識を十分に備えていること
4)  職場の事情に精通していること
5)  仕事に精通し、部下よりも能力的に優れていること よい聴き手であること これからはプロフェッショナルの時代となりますから、
 特に上記4)5)が重視される方向にあります。

考課者がよく行う過ちは?

④基準に従わずに評価した場合、以下のような代表的なエラーが生じる可能性があります。 これまでの経験では、営業部門の管理者は
「極端化傾向」に走りやすい傾向があります。メリハリを利かせている親分肌の人は、ここが非常にばらつきます。
(実際に、親分肌の上司ほど指示の仕方が悪く成果のバラツキが多いということもありますが)。
「中心化傾向」はどちらかと言えば、気弱な管理職、監督職の方が評価を避けて、全部Bに 集中してしまうようなケースが見受けられます。

実際、この「寛大化傾向」、「中心化傾向」、「論理的誤差」というのは、基本的にはケー ススタディを解くことによって自分の傾向が見えてくるので、考課者訓練などのグルー プワークで気づいてもらう必要があります

考課に感情が入る、甘辛が出るといったことで余計に社員がやる気をなくす危険性がありますが?

⑤当然のことながら既に述べたように考課に好き嫌いの感情を入れることは禁物です 。
ただ、「考課に感情をまったく入れるな!」と言ったところで人間は感情をもった生き物です。
したがって、度(バランス)の問題となるでしょう。しかし、評価のフィードバックが分析できないような、事実も無く後付け理由であったりすると社員のモチベーションは一気 に下がります。
このため、多くの人が評価に関与する方法(多面評価)とフィードバック制度などを運用することなどが挙げられます。
その他、人事部門は評価結果を最低5年分は保管し、個々人の評価を分析し、考課者を指導するというバックアップ体制も重要とな ります。
労働組合にも考課結果がオープンにできるような制度を作るなどの工夫をして、仕組みを作ってフォローするしかありません。

自己評価と上司の評価にかなりの違いが出る場合、どのようなことが考えられますか?

⑥そもそも自己評価は部下に内在する問題点の発見と問題解決への手がかりを部下自身に掴ませることにあります。
自己評価は、部下が自分のことを再認識し、自己理解するチャンスとなります。この自己理解こそ、次なる自己向上の足場となるのです。
そこで違いが出る要因として以下の4点が挙げられます。

1)  考課基準の曖昧さや考課基準の理解不足
2)  上司と部下とのコミュニケーション不足
3)  自己理解の不足:部下にも、部下自身が気づいていない事実もあり、これが部下の自己理解を妨げる場合もあります。
 上司が見ている事実は   ありますが、その事実に部下は気づいていません、そのため部下は伸び悩んでいる状態です。
 そこで、部下の自己評価に表れていない事実について気づかせるのです(真のフィードバック)。
4)  自己防衛あるいは逃避スキーマ:自我が自分を現実から守るために無意識にとる思考パターンで、精神的破たんを避けるための心の動きをいいます)

ジョハリの窓;自分も相手も気づいている領域(①)を広げることが大事です。そのためには、上司や仲間の援助が必要となります。

他者評価と自己評価には、密接な結びつきがあると聞いたことがありますが?

⑦被評価者の認識と、客観的な評価との間にずれがあることは、ある意味で避けがたいことです。
また、他者から何かのことで褒められたり批判されたりすると、そのことについて自信がついたり自信がぐらついたりするだけでなく、
関係のないことまで含め、いわば自分自身の全般にわたって、自信がついたり、自信がぐらついたりします。
その逆に、自己評価に影響されて評価が甘くなることもあります。他者評価と自己評価には以下の関係があり、フィードバック面談などの場で
必要に応じて、そのギャップを埋めることに努める必要があります。
他者評価と自己評価には以下の関係がありフィードバック面談などの場で必要に応じて、そのギャップを埋めることに努める必要があります。

1)  他者からの承認が与えられれば、その対象となった特性や仕事などについての自己評価は上昇し、否認されると自己評価は下降する。
2)  この影響は、承認や否認の対象となった特性や仕事やについての自己評価だけでなく、関連のある他の特性や仕事や、まったく無関係な特性   や仕事についての自己評価にも影響するとされている。
3)  また、自己評価の変動に関しては、他者から承認された場合の影響より、否認された場合の影響の方が一般に強くなる。

考課制度要綱に不満はなく、「あの上司に評価されるのがたまらない」とよく聞きますが、信頼を得る上司像は?

⑧今の時代は変革と不確実性の時代であり、職場はまさにそれにさらされています。このような時代においては人間関係に指針を求めることになり、信頼のレベルにより大きな影響を受けます。
リーダーシップ像は、リーダーとしての有能さ,意思決定者としての有能さ。リーダーとしての評価は、専門知識や分析力の切れや人間関係の達人といった点よりも,最適のタイミングで必要な意思決定ができるかどうかです。
リーダーの能力として有能さと誠実さは重要な要素です。誠実さとは、私利私欲を交えず、真心をもって人や物事に対することということです。
これを徳目(仁・義・礼・智・信)という方もいます。リーダーとしての誠実さとは、結果として部下との口約束を裏切る、上への報告で部下の手柄を自分のものにする、陰で部下をけなすなどの行動をしないことです。リーダーがころころと異なる話をする、「綸言(りんげん)汗の如し」(君主の言は一旦口から出たら取り返しはきかない)であり、影響力の及ぶところを理解すべきです。

誠実さの条件をあげるとすれば何でしょうか?

⑨誠実さの条件は以下の要素を兼ね備えたトータルでの能力と言えますが、これはリーダーとしての最低条件といえます。
1)  オープンであること
2)  公正であること
3)  気持ちを伝えること
4)  真実を告げること
5)  一貫性を示すこと
6)  約束を守ること
7)  秘密を守ること
これらの能力は人事考課や目標管理制度の運用において非常に重要となります 。

人事考課者訓練とはどのようなことをするのでしょうか?

⑩人事考課者訓練の目的は以下の通りです。
1)  人事考課の目的を理解させる
2)  人事考課の仕組みを理解させる
3)  人事考課の基準を理解させる
4)  人事考課実施上の諸原則と留意点を理解させる

まず、考課者訓練を十分に行うには、人事考課制度の周知・徹底を行い、考課ルールの確認が必要です。そして考課者訓練で一番重要なのは、
考課者の考課基準の平準化です。レベルを合わせ、同じ視点を見出していくということが重要になりますので、研修を取り入れ、個人で考慮した
後にグループワークをすることによって「お前そんな考え方をしていたのか」とか「そういう考えは参考になる」とお互いがどのように考えているかを気づく機会が必要です。
時間があればロールプレイングで擬似体験をしてもらうことで、より理解を深められるような工夫が必要となります。